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石炭産業遺産と「まちづくり」

更新日 2018年02月22日

故郷への想い

ツォルフェアアイン炭鉱業遺産群大学を卒業して研究者の道に入った直後でした。中学時代のクラス会で同級生から、「自分は直方に住んでいるが、この街を誇りに思うことができない。」と聞かされ、大変なショックを受けました。高校時代から直方を離れている「よそ者」の私は、故郷を美化していたところがあったと思うのですが、実際に暮らしている地元の人にとっての現実は、「美しい直方」などという甘ったれたものではないと気づかされました。その体験を経て、社会科学の研究を志す者の一人として、直方や筑豊に関わる問題を研究しなければならないと考え、その後、文化政策の観点からアプローチできると気づくに至りました。

昨年までのドイツでの在外研究中、ドイツの研究者仲間に、私が旧産炭地生まれで産業遺産に関心があると伝えたところ、ルール工業地帯の石炭産業遺産群を見るべきだと言われました。この言葉を聞き、私は「産業遺産を研究する時期にきているのだな。」と感じました。遺産群の中には、エッセンにある世界一美しいと言われている炭鉱、世界遺産「ツォルフェアアイン炭鉱業遺産群」も含まれます。この炭鉱は、操業停止前から閉山後の跡地利活用について地域住民を巻き込んで議論がなされていました。閉山後にはミュージアムが開設され、そのミュージアムの名前を冠したデザイン賞も世界的に有名です。現地を見て回ったことで、「まちづくり」における産業遺産の保存と利活用の研究への思いは、より強くなりました。

歴史から学ぶ

直方市の産業遺産は、主に石炭産業に関するものでしょう。「直方なくして日本の近代化はなかった。」と言われるように、日本の近現代や将来を考える際に、直方や筑豊の歴史から学ぶことは非常に多いはずです。

石炭は、近代日本の「鉄」と「エネルギー」という、社会生活の根幹に深く関わってきました。日本近代化の象徴とされる官営八幡製鐵所を支えたのも筑豊炭田です。また、石油、原子力、再生可能エネルギーなどを含めた今後のエネルギー源や電力供給の問題を考える際にも、石炭は大きなヒントになると考えます。もっとも、石炭産業に関しては労働環境などの様々な問題があり、今でも負のイメージが想起されます。しかし、石炭について様々な角度から深く考えることは、より良い社会のあり方について貴重な手がかりを与えてくれるはずです。負の歴史やイメージに目を背けずに取り組むことによってはじめて、石炭産業遺産の「魅力」が見えてくると思います。

まちの動線

直方市石炭記念館一昨年にドイツから一時帰国して直方市石炭記念館を訪ねた際に、八尋孝司館長がとても熱心に館内を案内してくださいました。その姿に深い感銘を受け、昨年11月には、私が大学で担当している少人数ゼミの合宿でも訪問しましたが、学生たちも館長のパワーに圧倒されていました。

八尋館長のご着任後、来館者数が大きく増えたことはとても喜ばしいです。 しかし、館長一人に頼り切りになるのは将来を考えると不安です。今後は人材育成や文献資料の保存、館内の展示方法の工夫などが課題と思われます。石炭記念館には歴史的建造物も残っていますので、それをオシャレに活用することも一つのアイデアだと思います。歴史的建造物を改修したツォレルン炭鉱跡(ドルトムント)のレストランは地元の方々で賑わっていました。石炭記念館は高台にあり、福智山も見晴らせる景観ですので、カフェやビヤガーデンなどがあってもいいかもしれないですね。

私が5年前に「現代アートと法」という論文を書いた際、現代アーティストである川俣正さんが、田川で「コールマイン田川」というアートプロジェクトを行っていたことを知りました。この頃から、「現代アート」、「産業遺産」、「まちづくり」といった問題が、自分の中でつながり始めたように感じています。直方駅、多賀神社、石炭記念館、商店街といった動線をつくり、まち全体を一体的に整備して、地元の皆さんが足を運んでみたいと思えるような「まちづくり」に取り組むことが必要ではないでしょうか。「まちづくり」を進めるためには、地元の方々が、自分の住んでいる地域について「自分のこと」として考え、諸課題に主体的に取り組むことが求められていると思います。

「この国のかたち」

直方や筑豊を取り巻く問題について考えることは、日本という「この国のかたち」を考えることなのではないかという思いがますます強まっています。旧産炭地のことを学んでいると、「キレイ事」では済まされない問題が数多く存在し、悲しみ、怒り、絶望などの感情に襲われることも少なくありません。しかし、それらの問題に向き合い、解決策を模索しながら得られるものがあれば、それは今後の日本や、国外でも応用できる普遍的な価値を持つだろうと確信しています。

とりわけ将来を担う若い世代が、家庭や教育現場を含めて、もっと関心を持って直方のことを学べる環境が整うことを願っています。

このページの作成担当・お問い合わせ先

企画経営課 ふるさと情報係

電話番号:0949-25-2236 ファックス:0949-24-3812
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